
自社の製品やサービスを富裕層に向けてアプローチしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
富裕層向けにマーケティングや販促をするなら、富裕層の傾向を把握することが大切です。
本コラムでは、日本における富裕層の実態・富裕層に多い職業・富裕層の生活傾向・富裕層に届けやすいマーケティング戦略などについてお伝えします。
富裕層とは
お金持ちであれば富裕層というイメージを持つ方も多いでしょう。では具体的には、どのくらい資産を持っていれば富裕層なのでしょうか。
富裕層の基準について、国が定めた定義はありません。一般的には野村総合研究所による定義を基準に富裕層かどうかが判断されています。具体的には超富裕層・富裕層・準富裕層の3つの層があり、純金融資産保有額によってわけられています。
- 超富裕層:純金融資産保有額が5億円以上
- 富裕層 :純金融資産保有額が1億円以上5億円未満
- 準富裕層:純金融資産保有額が5000万円以上1億円未満
富裕層の世帯数
では、富裕層は日本にどれくらいいるのでしょうか。野村総合研究所が2025年2月に発表したデータによると、2023年の世帯数と保有資産規模は次の通りです。
富裕層の保有資産規模の総額は802兆円規模にのぼります。
日本の富裕層は、さらに増加傾向であるため、富裕層をターゲットにしたマーケティングの重要性も高まっています。
富裕層マーケティングについて
富裕層をターゲットにしたマーケティングのことを、富裕層マーケティングといいます。富裕層ならではの特徴に合わせて、製品やサービスを届けるために宣伝や広告を行い、富裕層に対して申し込みや購入を促します。
前述のように、2023年の富裕層の純金融資産の総額は802兆円規模でした。一方で、日本の大半を占めるマス層(純金融資産保有額3,000万円未満)の4,424万世帯の純金融資産総額は711兆円だと推計されています。
つまり、マス層よりも富裕層のほうが市場規模が大きいのです。
また、経済的にゆとりがある方々ほど、対価に見合った価値に対して適切な報酬を支払うことをためらわない傾向があります。そのため、富裕層に対してマーケティングを行うことで売上や利益の向上が見込みやすい場合も少なくありません。
引用元:野村総合研究所『富裕層・超富裕層の世帯数は、2005年以降の最多に』(参照 2025-06-10)
富裕層マーケティングのメリットとデメリット
富裕層マーケティングにはメリットもあれば、デメリットもあります。
富裕層マーケティングのメリット
富裕層の保有資産規模は大きく、富裕層同士はつながっていたり、情報交換やよいサービスを紹介し合ったりする傾向にあります。そのため、富裕層マーケティングが成功すると、大幅な売上や利益の向上が期待できるでしょう。
富裕層マーケティングのデメリット
富裕層は世帯数としては少数派です。ターゲットが狭いため、マス向けのマーケティングを行っても情報が届きにくく、効果的なアプローチを見つけるのは簡単とはいえません。成果を得るには時間がかかる可能性が高いと考えておきましょう。
富裕層に多い職業
富裕層といってもさまざまな職業の方がいます。どのような職業に富裕層が多いのでしょうか。
企業の経営者やオーナー
富裕層のうち過半数を占めているとされるのが、企業の経営者やオーナーです。例えばフォーブスジャパンによる「日本長者番付」では、毎年企業の経営者やオーナーが上位に軒を連ねています。
2024年の日本長者番付においては、日本が誇るアパレルブランド「ユニクロ」の創業者でファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏がトップで、世帯の保有資産総額は5兆9,200億円だと発表されました。
医師
医師も、富裕層のなかで上位に多い職業です。なかでも開業医や医療法人経営の保有資産が多いとされています。厚生労働省の「第23回医療経済実態調査」では、開業医の平均年収は約2,800万円だとされています。なお、勤務医では約1,500万円です。
必ずしも年収と資産が比例するわけではありませんが、不動産投資などを行っている医師も多く、富裕層の基準に入る医師が多いでしょう。
地主
富裕層のなかには土地や建物などの不動産を持つ地主も多いと考えられます。2022年度、首都圏においては一戸建てが平均3,801万円、マンションが平均4,343万円の価格で売れていたというデータがあります。不動産を持っている場合、保有資産は大幅に上がると言えます。
ただし、保有しているだけでは収入になりません。富裕層マーケティングの際は、保有する土地や建物を貸して賃貸経営をしている不動産オーナーに向けて行うのがよいでしょう。
引用元:Forbes JAPAN『日本長者番付』(参照 2025-06-10)
厚生労働省『第23回医療経済実態調査』(参照 2025-06-10)
公益財団法人東日本不動産流通機構『首都圏不動産流通市場の動向(2022年度)』(参照 2025-06-10)
そのほか
弁護士や税理士などの士業をしている方々や、パイロット・大学教授・投資家・著名人などの年収が高い方々も富裕層に多いと考えられています。
富裕層の生活や傾向について
裕層に向けたマーケティングをするなら、富裕層に届く場所で、届くかたちで情報を発信することが大切です。まずは富裕層が多く住む地域や行動パターンなどをリサーチしましょう。
富裕層は関東と関西に多く住んでいる
富裕層が多く住む地域は、日本のなかでは東京都がトップです。イギリスの投資コンサルティング企業らが発表した2024年版「World’s Wealthiest Cities Report」では、世界の裕福な都市が公開されています。東京都は、世界の都市のうちでも第3位です。
また、日本国内では総務省が2019年に公表したデータにおける総世帯の家計資産総額1〜10位は次の順になっています。
この結果から、特に富裕層は関東と関西エリアに多いことがわかります。
引用元:Forbes JAPAN『2024年版「富豪」が最も多い世界の都市ランキング、東京は3位』(参照 2025-06-10)
厚生労働省『2019年全国家計構造調査』(参照 2025-06-10)
富裕層は特別感を求める傾向がある
富裕層は、有形の製品の場合、オーダーメイドや限定商品を好む傾向にあります。また、形のあるもの以上に特別なサービスや体験に対してお金を使う傾向が強いと言われています。すでに物質的には満たされているため、特別感のあるものごとにお金を費やしたいと考えるのです。
例えば、コーヒーを飲むにしてもチェーン店よりもラグジュアリーホテルのカフェを選択する方が多いでしょう。また、高級レストランや飛行機のファーストクラスを選ぶようなときも、おいしさや居心地のよさはもちろん、スタッフの接客がよりよい店や航空会社を選ぶでしょう。
富裕層に関心を持ってもらうには、製品の質だけでなく、接客などのサービスや体験のよさも伝え、特別感を感じてもらうことが大切です。
富裕層同士のつながりを大切にする
富裕層は、富裕層同士のつながりを大切にする傾向があります。富裕層同士では、富裕層ならではの資産管理や危機管理の情報交換などが積極的に行われます。
資産を狙う人々が近寄ってくることも多いため、富裕層はそうでない人との接触を警戒していることが多く、信頼ができる富裕層同士で情報交換を行うことが多いのです。
地域や友人の紹介でのつながりはもちろん、特定のクレジットカードのブラックカードや高級車や時計を持つことで参加できる交流会や、一定以上の年間購入金額で招待される高級ブランドのパーティーなどで出会うことも多いようです。
富裕層は信頼する企業や担当者から購入する
富裕層同士のつながりを大切にしてクローズドな環境を好み、信頼できる企業や担当者を紹介し合う習慣があるため、1人の富裕層をきっかけに大幅な売上の向上につながることも珍しくありません。
1人の富裕層からの信頼を得て製品やサービスを気に入ってもらえれば、友人や知人を次々紹介してもらえるということがあり得るからです。
ただし、前述のように富裕層には警戒心が強い方が多いのも事実です。そのため、信頼関係を構築するには相応の時間や質の高いサービスが必要だと心得ておきましょう。
富裕層は自ら調べて行動や決断をする
富裕層は、信頼できる人たちからの情報は信用しますが、基本的には自ら製品やサービスの情報収集をする傾向にあります。本当に質のよいものなのか、本当にそれだけの金額を支払う価値があるサービスなのかはもちろん、富裕層の資産を利用する詐欺ではないかなどを徹底的に調べます。
そのため、第三者であれば、専門家などから発信された情報源を重視します。専門家が書いている記事や、エビデンスを持つ情報は富裕層にとって信用度の高いものだと言えるでしょう。
富裕層に届きやすい広告媒体
富裕層向けに広告を打つ場合、どのような媒体を使えばよいのでしょうか。富裕層といってもインターネットを主に使う人たちもいれば、紙媒体をメインに情報収集している人たちもいます。主に、富裕層に届きやすい広告媒体は次の通りです。
富裕層向けWEBメディア
富裕層向けのWEBメディアに広告を出稿するのもよいでしょう。例えば、次のようなものが考えられます。
- 高級志向のゴルフ情報サイト
- マンションの不動産投資やその管理方法を紹介するサイト
- 高級ブランドのアパレルや車を紹介するサイト
- ラグジュアリーホテルを紹介するサイト
- 高級レストランの情報サイト
- 富裕層向けの資産管理や金融情報を紹介するサイト
自社でこれらのオウンドメディアを運営するのもよいですが、オウンドメディアは成果が出るまで時間がかかります。少なくとも半年程度の長期戦略が必要でしょう。そのため、オウンドメディアが軌道に載るまでは富裕層向けのメディアに広告を出すのもよいでしょう。
富裕層に特化した紙媒体
雑誌やフリーペーパーなどの紙媒体への広告出稿も有効です。富裕層は、製品やサービスの購入において安さや手軽さを重視しません。それ以上に品質・価値・信頼性に重きを置く傾向にあります。例えば、医師向け業界紙や企業オーナー向け雑誌など、富裕層向けの紙媒体に広告出稿することで、売上につながる可能性は高くなるでしょう。
また、チラシであれば、富裕層が居住するマンションやエリアに集中的に配布することもできるため、ターゲティングしやすいでしょう。
富裕層向けサービスとのコラボ広告
すでに富裕層向けに提供されている製品やサービスとコラボレーションし、コラボ先が出稿している広告媒体を活用するのも有効です。
既存で人気のある富裕層向け製品やサービスであれば、すでに効果の出やすい広告媒体を把握しているはずです。自社だけで模索するよりも、よりスムーズに成果につなげることができるでしょう。
既存サービスとコラボレーションすることによって富裕層への認知度を高め、ブランディングや売上アップにつなげることができます。
これまでには、不動産企業が高級ワインブランドとコラボしたことから富裕層への物件販売を促進した事例や、メーカーが高級自動車とコラボしたことから富裕層向け新製品の販売を促進した事例などがあります。
SNS広告
自ら調べて行動や決断をする富裕層は、情報収集としてSNSを活用する方も少なくありません。そのため特に富裕層など、特定のターゲットに絞り込みたい場合はSNS広告がおすすめです。
SNS広告では年齢、性別、地域、興味関心、行動履歴など、広告のリーチ先を非常に細かく設定できます。
例えば、会社の経営者に広告を届けたい場合、経営戦略、組織運営などに関するコンテンツを見ている可能性が高いため、そのようなコンテンツを重点的に見ているターゲット層に絞って広告を露出できます。ほかにも世帯収入・富裕層が多く住む地域・富裕層が探しそうなキーワードなどを設定すれば、富裕層に届けることができるでしょう。
タクシー広告
富裕層向けのマーケティングにおいて不可欠だとされているのがタクシー広告です。富裕層は自家用車を持っていることも多いですが、タクシーを利用する機会も多いからです。余暇を楽しむ時間や金銭的な余裕がある富裕層の場合、旅行に出かけてタクシーに乗るような機会も多いでしょう。
タクシー内はクローズドな空間であり、広告の視認性や訴求力が高いため非常に有効です。特に近年はタブレットやテレビを設置して動画広告を流すタクシーが増え、さらに訴求力が高くなりました。
ゴルフカートのサイネージ広告
ややニッチではありますが、ゴルフ場で利用するゴルフカートのサイネージ広告も効果的です。富裕層にはゴルフ愛好家が多く、富裕層がゴルフカートを利用する機会も多いため、ターゲティングしやすく富裕層に訴求しやすい媒体だといえます。
タクシー広告と同様に比較的クローズドな環境であるため注目されやすく、ゴルフ中の仲間との会話の一端にもなり得るため、高い効果が期待できます。
なお、ゴルフ会員向けのサイトや会報誌の広告も、富裕層向けマーケティングにおいては非常に効果が高いとして以前から注目され続けています。
富裕層に広告を届けるコツ
富裕層向けに広告を出稿するなら、富裕層に確実に届けなければ意味がありません。ここからは、富裕層に対して確実に広告を届けるためのコツをご紹介します。
年収でターゲティングをして出稿する
富裕層に向けて広告を出稿するなら年収でターゲティングをしましょう。例えばGoogle広告を活用すれば世帯収入上位10%など、世帯年収でターゲティングすることができます。
また富裕層向けのWEBメディアに広告出稿する際は、読者層の年収をリサーチして出稿するとよいでしょう。広告出稿をしたいと問い合わせれば読者層の年収を開示してくれるWEBメディアもあるでしょう。
エリアでセグメントをかける
前述したように富裕層が多く住む地域があります。関東や関西には富裕層が多く住んでいることがわかっており、なかでも東京都は世界的に見ても富裕層が非常に多いとされています。
さらに東京都のなかでも港区・渋谷区・新宿区・世田谷区など、高級住宅街の多いエリアに絞って広告を打つのも効果的です。WEB広告に限らずポスティングなどオフラインの広告も検討しましょう。
富裕層がいる会員組織にアプローチする
富裕層のいる会員組織にアプローチするのも有効です。特定のクレジットカードのブラックカードやゴルフの会員権を持つ方々向けの機関誌へ広告出稿したり、会員組織とコラボレーションをして製品やサービスを紹介してもらったりすることで富裕層に情報を届けることができます。
また富裕層がいる会員組織と協業できれば、富裕層がよく利用しているサービスやWEBメディアを教えてもらえるなど情報収集にも役立つでしょう。
自社製品に合う富裕層を選ぶ
冒頭でご説明した通り、富裕層には3種類の層があります。また、医師やビジネスオーナーなどさまざまな業種の方がいます。自社製品に合う富裕層を選ぶことが大切です。
例えば、純資産保有額が5億円以上の超富裕層向けなら、価格が数億円以上するビルやマンションなどの不動産・クルーザーや航空機、余暇や日々をより快適に過ごせるようサポートする会員制高級リゾートホテル・プライベートコンシェルジュなどの商材が適しています。
純資産保有額1億円以上5億円未満の富裕層向けには、数千万円からの購入が可能な高級車、通常の高級サービスよりも特別感の増すコンシェルジュ付き家事代行・ワインセレクトサービスなどがよいでしょう。
純資産保有額5000万円以上1億円未満の準富裕層向けには、都度利用でラグジュアリー体験を味わえる高級ヘアサロンやエステサロン・高級パーソナルジム・フルオーダーの家具などが適していると考えられるでしょう。
また、職種面では、個人クリニックを開業している医師なら医療機器・WEB制作・患者管理システムなどを探していると考えられます。ビジネスオーナーであれば、採用サービス・会計システム・オフィス家具などを販売している企業と親和性が高いはずです。
自社の製品であればどのような富裕層に向けてアプローチするべきかよく検討しましょう。
まとめ
富裕層は日本にも多く、なかでも東京都は世界の都市と比べても富裕層が多く住む地域です。そのため、日本においては富裕層に向けたアプローチは非常に有効だと言えます。
富裕層向けに製品やサービスを届けるには、特別感のある体験やサービス・信頼できる情報発信・紹介経由での接触などがポイントです。
また、広告媒体の選定も重要です。WEB広告や富裕層向け専門メディアなどを活用して、的確にアプローチしていきましょう。
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